ARAKAWA, For Example BAM | For Example (A Critique of Never)の詳細情報
BAM | For Example (A Critique of Never)。荒川修作とマデリン・ギンズのユニットは、絵画、建築、彫刻の作品群でよく知られていますが、彼らは2本、実験的フィルムも制作しています。そのうちの一本が、1971年につくられた「For Example」。ニューヨークのバワリー地区を一人の少年が動き回る様をフィルムに収め、ナレーションをつけた作品で、ドキュメンタリーとフィクションの境界を揺れ動く極めて先鋭的な作品です。公共空間と身体の動的な関係をこのような形でフィルム化した作家は珍しいと思います。
この本は、そのフィルムのナレーションとコマ画像を見開きにアレンジしてつくられたもので、1974年にイタリアで出版されたものです。単に映像作品の解説本ということではなくて、これ自体が一冊のアーティスト・ブックとしても見ることのできる貴重なもので、現在ではほぼ入手不可能な一冊。
コンディションは、表紙のエッジに所々ヨレがあり、ページにも経年による若干のくすみが見られますが、全体としては極めていいコンディションで保たれています。写真を参照なさってください(表紙と裏表紙は表面のコーティングに反射が写り込んでしまいました。すみません)。
荒川+ギンズの仕事の関心のある方、あるいは1960年台から70年代のニューヨーク・シーン、実験映画シーンなどに関心のある方にとっては、とても重要な意味を持ち得る一冊と思います。あるいは、舞台になっているバワリー(ニューヨークのダウンダウンで、当時はアル中の人たちが屯していた地域)というモチーフに焦点を合わせれば、マーサ・ロスラーの仕事などとの比較も可能です(写真家ロバート・フランクもずっとバワリーに住んでいました)。個人的には、そういうちょっと正史とは違った視点から論を立てる批評家や研究者がいてもいいのかなと思いますが、管見の及ぶかぎり、いません。と、最後は蛇足でしたが、いずれにしても、かなり貴重な一冊であることは間違いありません。